ナショナルエディションで困った

    2011.12.15 00:38|楽譜
    ショパンは譜面に於いて二種のアクセントをわざと区別して書いたそうで、ナショナルエディションもそれを踏襲しています。すなわち、短いアクセントと長いアクセントであり、前者は強弱法上の強調、つまり普通のアクセントを意味し、後者は一つの音符または継続する複数の音符の上に置かれて「表現的な重要性を伴う強調」を表すそうです。
     これはナショナルエディションの公式文書の157ページで次のように明記されています。PDF文書を直接リンクするのもなんなので、ここの下の方、Jan Ekier ... free E-book の行をクリックすると読めます。PDF文書への直接リンクは→こちら

     We distinguish wherever possible two kinds of accent sign: short accent and long accent. Chopin seems to have deliberately differentiated these two signs, employing the former for the dynamic strengthening of a single note, a double note or a code and the latter -- placed above one note or a succession of notes -- also with expressive significance.

     ようするに、長いアクセントは音をどう出すかよりも、むしろ表現的な意味での強調を指示するものでしょう。
     ところが、この<表現アクセント>が、ナショナルエディションの楽譜では、デクレッシェンドと見分けにくいところが結構あるのです。
    noc2bar9
     これはノクターン2番の9小節目ですが、見た目では長いアクセントであり、表現アクセントです。5小節からpの指示ですがその後いろいろ展開もあって、9小節で改めてpで行けと念押しし、「だからといって12拍子の4拍目のソは弱っちくしないで、しっかり響かせろよ」との意図だと思いました。そうやるからこそ、7拍目のppでの空気感の変化が効果的になるのでしょう。
     でもペトルッチの無料楽譜を漁ると、ここが明白に7拍目のppにかけてのデクレッッシェンドに見える版が複数あります。これでは譜面の指示する音楽的内容が全然違ってしまいます。
     一方、ショパンの存命中に出た或る版では、長いアクセントに見えます。
     そもそも問題なのは、ショパン没後、ほとんどのエディションでショパン由来のアクセントの長短の区別をやめ、表現アクセントのはずのものをデュナーミクのアクセントに統一してしまったことです。それを、エキエルさんがウイーン原典版から復活させたといいます。ウイーン原典版ではどうなっているか知りませんが、現行ナショナルエディションのように表現アクセントとデクレッシェンドの見た目の区別がつかず、いちいち考えて譜読みしなければいけないとしたら、少々厄介かもしれません。
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    Author:諸パン
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